東京高等裁判所 昭和32年(う)1159号 判決
被告人 鄭俊和
〔抄 録〕
常習賭博の罪の成立あるがためには、当該賭博者の属性として賭博の習癖あることを要するは、まことに所論のとおりであるが、苟くも賭博習癖の発現ありと認められる行為あるにおいては、唯一回の賭博行為についても常習賭博の罪の成立あるを免かれない。原判決挙示の証拠によるときは、被告人鄭俊和は原審相被告人卞鳳煥及び同全泰元と共議の上昭和三十一年七月初旬以来同原審相被告人等との共同経営にかかる射的遊技場における長野県公安委員会の許可にかかる適法な原判示遊技方法を変更して棚の台の上に乗せた標的の煙草ピース空箱一個の表面を白、裏面を青、縦横の側面を赤と定め、多数の客をして右三色の中一色に五十円乃至千円の現金又は現金に引き換える金券を賭けさせてこれを徴収し、賭客の代表者一名をして空気銃でキルクの打玉を右標的に発射させて、棚の台から落下した標的表面の色の賭者を勝者とする方法で勝敗を決定し、白又は青の勝者にはその賭けた現金又は金券の額の二倍、赤の勝者には賭けた現金又は金券の額の四倍に相当する現金又は金券を交付し、勝者以外の賭客の賭金又は金券を被告人等の所得とする明らかに賭金博奕と認めらるる方法に改めて営業を継続したが、その間数度に亘つて警察官から、右営業方法が賭博に属するをもつて即時停止するよう警告され、同月二十八日頃更にそのことがあつたにかかわらず、敢てこれを無視し、前示原審相被告人等と共謀の上、同月三十日からは、それまで午後七時頃からの夜間営業であつたのを警察の監視の眼を避けるため、わざと、昼間営業に改め、而も表戸には幕を張り、客の出入りは裏口に変更し、特にその日は現金を賭ける方法で前示賭博を反覆し、翌三十一日は殊に同被告人において、現実に直接賭博営業に掌つた原審相被告人全泰元に自ら賭博資金壱万円を手交して午後一時五十分頃から開店し、同じく、現金を賭ける方法で前同様の賭博を約三十八回に亘り繰り返し行つたものであることが明白であつて、その所為において被告人鄭俊和の属性として賭博習癖の発現ありと認め得るに充分なものがあるというべく、原審が、原判示事実を認定して同被告人を常習賭博の罪の共同正犯として処断したことは正当である。原判決には、記録を精査するも、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認もなければ、各所論にいうが如き法令適用の誤もない。
(三宅 河原 遠藤)